法界寺 薬師堂
法界寺 薬師堂(重要文化財)
五間四間。
寄棟造。
本瓦葺。
康正2(1456)年、建立。
◎持田ノ眼◎
総門から進むと右手に見える建物が薬師堂である。
元は、奈良県龍田の伝燈寺の本堂であったが、
明治37(1904)年に、法界寺へ移築され、修理を経て、
薬師堂へと姿を変えた。
内部には、本尊で「乳薬師」とも呼ばれる薬師如来立像が、
安置されている。
薬師如来立像は重要文化財で、
その胎内には、日野資業が法界寺創建時に、
本尊とした最澄自刻の薬師如来像を納めてられている。
このまるで母が子を宿すような薬師如来像は、
やがて安産を祈願する妊婦からの篤い信仰を集め、
赤ん坊への授乳に霊験があるとされた。
「乳薬師」と呼ばれる所以である。
こうして、女性からの信仰を、
一身に集めて来た薬師如来像を安置する薬師堂は、
どこか穏やかな空気に包まれ、
命に対する優しさを感じる。
春先の柔らかい季節に訪れると素晴らしい。
なお本尊の薬師如来像は、
戦乱等で薬師堂が失われて以降、
長らく阿弥陀堂に安置されていた。
このこともあり、阿弥陀堂を「本堂」とも呼ぶようになっていたが、
明治になって、薬師堂が完成し、薬師如来像が薬師堂に移ってからは、
薬師堂のことも「本堂」と呼ばれたために、
「本堂」が二つある時期があった。